長野県について
面積:13,560 km²
人口:2,008,353人(令和5年6月1日時点)
長野県は日本の中部に位置し、日本アルプスの雄大な山々や信州平野の広がる景色が有名です。スキーやスノーボードは冬の楽しみで、信州蕎麦や信州リンゴなどの美食も堪能できます。歴史的な観光地も豊富なため、自然と歴史に彩られた心温まるロケーションを楽しむことができる県です。
長野県の企画振興部DX推進課 担当係長である相田貞晃様、主査である居鶴吾郎様にChatGPTを安全に使える「Crew」の実証実験の背景や効果、ご感想についてお話をお伺いしました。
------Crew実証実験の背景を教えてください。
長野県では、ChatGPTを始めとする、インターネット上で誰でも利用できる生成AIサービスは、業務の効率化に繋がることが期待され、必要に応じて活用すべきデジタル技術・サービスの一つとして認識しています。一方で、情報セキュリティに対する理解度や職員の業務に対する主体性が改めて問われる技術・サービスでもあると受け止めております。
このため、活用に当たってはサービスの特徴を理解することが必要であると認識し、様々な生成AIサービスの検証を行いました。
------様々な自治体向けChatGPTがある中で、Crewに決定された理由を教えてください。
既存サービスでは提供の少ない、組織内の複数のドキュメントを参照して文章を生成するサービスの活用を検討していたところ、Crewを検証させていただく運びになりました。
また、親会社が国内の金融機関(マネックスグループ:8698 (TYO))で、金融機関にも導入されていることからセキュリティ面でも安心感がありました。
自治体が利用できるサービスの中では、Crewは管理画面にある機能も豊富で、NGワードの登録など充実した基本機能が揃っていると感じております。
------Crewをどのようにご活用いただきましたでしょうか?
今回の実験目的は、ドキュメントの内容を踏まえた生成AIの活用方法の模索をしたいと考えていたので、複数のドキュメントを参照して、新たな書類のドラフト作成や条例・規則を踏まえたQ&Aの文章生成等に利用いたしました。
------Crewでは、書類をアップロードして、内容を参照して回答する機能があります。どのような書類をアップロードしてご利用いただきましたか?
具体的には、県の文書や会計などに関する文書を読み込ませ回答をさせていました。
中でも会計関係の書類はページ枚数も多く、印刷すると10センチほどの高さになります。
------物理で、10センチも(笑)
その会計関係の書類をアップロードし、【100万円以上の物品購入をしたいと考えています。とるべき手続を教えてください。】とCrewに質問します。そうすると、Crewから「物品購入をする際には、以下の手続きを取る必要があります。添付書類には、用途、品目、規格、・・・・・」と端的な回答があり、該当の手続きをリストアップすることができました。人間が長文の資料を読み込む代わりに、Crewに質問することで一次回答をざっと得ることができました。最終的なレビューは人間が行いますが、大切なポイントを効率的に探し出すことに使えました。
------Crewを導入してからの効果はいかがでしょうか?
先程の会計関係の書類については、読み込みや該当箇所を検討づけるのに数分、はまると1時間以上かかることもあります。その時間を、Crewだと数秒や数分で回答してくれる。加えて、参照元の条文も引っ張ってくれて数秒〜数分で完了して、ものすごく時短になりました。
これはつまり、一人あたりの職員の関連業務時間を従来比で9割ほど省略できる見込みになります。
------9割も省略できるのですね。他にも削減した時間はありますか?
他にも、自治体情報システムの標準化・共通化の書類に関しても回答を得られるようになったことで、作業時間を大きく削減することができました。今まで1時間ぐらいかかってた工程が、Crewを使うと数秒とか数分でできるようになりました。
自治体情報システムの標準化・共通化関係の資料は、その多くはデジタル庁が自治体に対して配布している資料になります。PDFで、文字と仕様図もあって7,80ページほどにもなるものがあります。従来だと、ぱぱっと読んでも1時間はかかり、難しい言葉も含まれているので検索したり思い出しながら頭に入れていく必要があります。
------難しい書類ですね。どのような質問をCrewに投げかけましたか?
【標準化に向けたFit&Gap※に関する注意点をリストアップしてください。】と質問しました。このリストアップを仮に職員が読んで調べると時間がかかりますが、Crewだと欲しい回答が一瞬で返ってきて、かつ参照元の場所を教えてくれるのが良かったです。
※Fit&Gapとは:サービスを導入する際、「そのサービスが持つ機能」と「サービス利用者が求める機能」を比較し、適合度合い(fit)と乖離度合い(gap)を確認すること。
また、国から配布される資料はバージョンが都度更新され、どこが更新されたか確認にも時間がかかります。0.1から0.2ぐらいに更新があった経過と変更点を知りたい場合、目視ではどこが変わったのかぱっと見分かりません。ページ数も多いので前のバージョンを全て覚えているわけではないので、どう変わったのか比較するのが面倒でした。そこでCrewで最新版をアップロードすることで、最新の書類から回答が受け取れて便利に感じました。
------他にもどのような利活用の用途があると思いますか?
資料作成の時間も大きく減ったように思います。従来なら、作りたい資料があったら、参照する資料を選んで中身を検索し、より精査して、資料作成に役立てる構想を考えるため、検索1時間・精査1時間で合計2時間ほどを費やしていました。それをCrewで聞くと、該当箇所を特定し参照して文章生成してくれるので、案件によっては2時間の資料作成時間がたった数十分にまで大きく短縮されました。もちろん最後に確認するのは人間が行いますが、着手の手がかりを掴んだりポイントをまとめたりすることにとても効果的だと思います。
------その他、Crewでどのような機能をご利用されましたか?
Crewに付属する便利なプロンプト※のテンプレートがあり、活用いたしました。他のサービスですと、プロンプトは自分で探す必要があったり別画面からコピペしなければいけなかったりしましたが、Crewだと画面内に用途別に収まっていて、ワンクリックでプロンプトを適用できるので、手軽に活用できました。
自分たちでもプロンプトと呼ばれる聞き方を工夫しました。生成AIを本当に業務で活用するためには、プロンプトが生成される回答の質の良し悪しの決め手になります。
※プロンプト:動作をするよう促すもの。生成AIに出すテキストによる指示を指す。
指示を出す側の人間もAIに慣れ、AIが回答しやすいような命令手法を習得する必要がありますが、Crewだとデフォルトで複数テンプレートが入っているので(※インタビュー時は19種類のプロンプトテンプレートを提供)、試してみたい人には簡単にできると思います。
余談ですが、英語のプロンプトもあって試しに使えたのは面白かったです。
------今後の改善要望はありますでしょうか?
今後は、法律や財務の専門的な回答精度ももっと向上してほしいと思っています。例えば、法律だと一つだけの文章で解釈が終わらず、その下にある政令・省令など具体的に枝分かれしていきやっと回答が得られるということが多くあります。
人間でも理解に苦労するので多少仕方ないところもありますが、もう少し複雑性があるドキュメントでも情報をまとめてくれると、行政の中でもより幅広い課でも使えるのではないかと思いました。
------まさに行政が使いやすい独自モデルを、今後開発していきたいと考えています。お時間いただき、誠にありがとうございました!