なぜ今、生成AIなのか?AI需要増加のその理由

April 11, 2024
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先日、米国のベンチャーキャピタル会社Sequoia Capitalが主催したイベント「AI Ascent 2024」の一部がYouTube動画で公開されました。会冒頭では開会挨拶が行われ、これまでのITの歴史をふまえた今後のAI動向について触れられていました。今回はその内容を日本語に訳し、解説を加えて紹介していきます。

引用元:「The AI opportunity: Sequoia Capital's AI Ascent 2024 opening remarks

■インターネットの歴史

クラウドシフトの初期およそ2010年頃、ソフトウェアの世界全体のTAM*1は約3500億ドル(約53兆円)でした。そのうちクラウドソフトウェアはごくわずか、60億ドル(約9000億円)でした。

左図の2010年と比較し、ソフトウェア全体の市場規模が大きくなり、クラウドソフトウェアのシェアが過半数になったことがわかる。

それから十数年後、昨年2023年のソフトウェア世界全体TAM*1は約6500億ドル(約98兆円)に成長し、そのうちの4000億ドル(約60兆円)がクラウドソフトウェア収益でした。クラウドシフトの初期のTAMから15%増加し、当時は市場がないと思われていたクラウドソフトウェアに需要があり、クラウドシフトが成功したことを意味しています。

*1 :TAM・・・Total Addressable Marketの略、事業全体の市場規模

世界中の人々に大きな影響を及ぼしたITサービスの変遷

ここからは一気に1960年代まで遡ってみましょう。半導体の技術革新により消費の方法が変わったことを皮切りに、あらゆるシステムやネットワークが誕生しました。

2000年代には、インターネットがより身近になりクラウドとして知られるようになると、2010年代は、それらのアプリが現れ、私たちの仕事の仕方を変えていきました。

そして、現在、COVID流行の影響もあり、効率的かつ生産的な業務の遂行に必要な情報やデータはすぐにオンラインで利用可能になりました。

■今後10年から20年にわたり、ビジネス利用や個人向けサービスはAIへシフト

上図のほとんどがクラウドやモバイルシフトによって生まれた企業であり、売上が10億ドル(約1500億円)以上に到達。クラウドシフト、モバイルシフトで生まれた企業のおよそ80%を占めていると考えられる。

これまでの歴史を加味すると、今後10年から20年の間でAIシフトがテーマとなっていき、オンプレミス*2からクラウドへシフトしていったように、次の数十年はAIの時代になるでしょう。今日においてはスライド画像にあるようにクラウドやモバイルが大半を占めていますが、AI市場はまだ成長のピークに達しておらず、競合が少ない状態です。加えて、今後の需要が見込まれる状況であることを考えると、スタートアップ企業にとっては、AI市場での成功を収める絶好のチャンスと言えます。

*2:オンプレミス・・・サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設の構内に機器を設置し運用すること。

■ユーザー規模3億!利用料はおよそ1億ドルに

驚くべきことに、生成AIは現在、約30億ドル(約4600億円)の売上規模となりました。SaaS市場が同じ売上規模に達するのに、10年かかっています。この尋常でないスピードに、人々の興味や需要が生成AIに注がれていることが分かります。

Saas市場と比較したAI市場の売上規模推移

顧客の需要は1つや2つのアプリにとどまらず、多くのAIアプリ、大企業、スタートアップの収益に反映され、さまざまな産業でプロダクトマーケットフィット*3を見つけ始めています。その証拠として、実際のユーザー規模はChatGPTにおいておよそ3億、大企業においても1億ドル(約151億円)に近い規模感となっています。

*3:プロダクトマーケットフィット・・・Product Market Fitの略、製品やサービスが、市場のニーズや要求に適切に対応し、顧客が満足する価値を提供できている状態のこと

ChatGPTのみならず、企業向けサービスの売上規模も拡大。

■コストの削減、そして生産性の改善に期待増

価格が上昇している分野に対し、生成AIでどうカバーできるか?期待が高まっています。

左のグラフは、S&P 500企業が100万ドル(約1.5億円)の収益を生み出すために必要な労働者数を示すグラフです。年々減少の傾向にあり、少ない人員で多くの収益を生み出すことが可能になってきています。

一方で、教育や医療、住宅など、社会にとって最も重要なものの多くは、はるかに速いペースで価格が上昇しています。AIがこれらの分野でコスト削減を促進し、より少ない資源で生産性の高い業務を支援することができるでしょう。

■AIにより会社全体がニューラルネットワークのような相互運用可能に

今日において、私たちはすでにAIを特定の業務プロセスやKPIに連携させ活用しています。

明日、例えばある企業の部署はより良い顧客体験のため、AIを起点に新しいUI(ユーザーインターフェース)*4を再考し始めます。最終的には、会社全体がニューラルネットワークのように機能し始めるかもしれず、たくさんの「1人企業」が生まれることでしょう。

ここで言う1人企業とは、会社全体がニューラルネットワーク*5のように機能し始めることにより、煩雑な業務をAIに任せそのリソースで人間が持つ創造性を発揮した業務に専念でき、その結果多くの人が主体的に行動できるということを表しています。

そのために何をすべきか?現実は、ここにいる人々が次の展開を決定することになります。私たちは、AIが社会の中で教育、健康な人口、より生産的な人口など、最も重要な分野のコストを削減し、生産性を高めるのに役立つと考えています。

*4:UI(ユーザーインターフェース)・・・User Interfaceの略、ユーザー(利用者)と、サービスをつなぐ接点のこと。

*5:ニューラルネットワーク・・・・ニューラルネットワークとは、人間の脳の働きを模した方法でデータを処理するようにコンピュータに教える人工知能の手法の一つ。

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